今回Trepoの取材を受けていただいたのは株式会社カラスのデザイナー井上裕一さん!
これまで超からあげクンや悪魔のおにぎりなどきっと皆さんが一度は目にしたことがある作品を数々世に送り出してきました😳
そんな凄腕デザイナー井上さんは現在「ダジャレコード」というダジャレをクールに表現するブランドを展開。
皆が知ってるデザインを手掛けたダジャレコードの井上さんは一体どんな方なのでしょうか。
ということで今回はTrepo編集部がデザイナー井上さんを直撃取材してまいりました♡

※本インタビュー記事は複数回に渡ってインタビューしたものをまとめた記事になります。
目次
いきなりですがこのポスター知ってますか?

こちらは東京の地下鉄・東大前駅に掲載されたDAJARECORDのポスター。
東大の合格発表⽇(3⽉10⽇)にあわせ、 3⽉4⽇(⽔)~3⽉10⽇(⽕)の1週間限定で、東京メトロ東⼤前駅に交通広告(1,030×1,456mm)を掲出されました☺️
貼り出されたのは東京⼤学本郷キャンパスの最寄駅でもある東京メトロ東大前駅です。
毎年、合格発表を終えた数多くの受験⽣たちが⽬にする場所に張り出されたのが「スベった受験⽣を応援するポスター」です😆✨
本来はスベった受験生を応援するポスターだったのですが、東大の合格発表中止で受験生の目の触れなくなってしまったこちらのポスター
その企画内容と秀逸なツイートが相まってTwitterでかなりの話題を呼びました😳
その反響はなんと
5,557RT
18,000いいね😳✨
※2020年4月時点
スベった受験生を応援するポスターのはずが合格発表中止で受験生に見られることなくスベるポスター(そんなバナナ…🍌)
この良い意味で見事にスベったポスターの生みの親こそ井上さんなのです!
井上さんプロフィール

井上 裕一(いのうえ・ゆういち)
福岡県出身。広告制作会社を経て、株式会社カラスに入社。ダジャレコード代表。主な仕事に、「悪魔のおにぎり」「Oisixとクレヨンしんちゃんのコラボ広告」「ダジャ絵Tシャツ」「銭湯のピアニスト」。カンヌ国際広告賞、ADC賞 、TDC賞など受賞希望。バスケとサウナとトンカツが好き。
ダジャレコードについて
ダジャレコードのユニークな活動

本日はよろしくお願いします✨ダジャレコードではどのような活動されているのでしょうか。

「身に着けるクールなダジャレのグラフィックを作ってTシャツを制作したりとか、熱いメッセージ広告を作ったりとか、イベントしたりとか」ですね。
ワニが輪になるとか、馬が埋まるとか、寒いダジャレをクールなグラフィックにするとかは最初からやっていて。

最近だと「スベった受験生を応援するポスター」を出しました。
スベった受験⽣を応援するポスター


Twitterの反響すごかったですよね!
スベるという言葉は一部批判も想定できますが、なぜあえてこの言葉を使ったんでしょうか?

今回の広告に対しての、SNSでの反応はかなりチェックしました。その中には、批判的なツイートもいくつかありました。
例えば、若者向けにむけた車のポスターの広告を掲出して、広告のターゲット以外の方も目に触れることがあると思います。その中にはもしかしたら家族を事故で亡くした方が見る可能性もありますよね。

ターゲット以外の方がみたときの批判は、広く届けるという広告の性質上少なからず常にある。でもターゲットに向けて真面目に熱意をもって応援していれば、炎上することはないと思ってます。


確かに。

ただ届けたい人に届ける前にコロナの影響で合格発表がなくなっちゃって(笑)
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だけどあのまま普通に出ているより、自分が出したこと自体もスベったっていう風にツイートしたほうが結果的に良かったというか。
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変な話、自分も失敗したと言うことも発信出来たことでいっぱい見てもらえる機会が増えたのかなと。

ご自身もスベったというツイート良かったですよね。
ダジャ絵Tシャツ

ありがとうございます。でもスベった受験生を応援するポスターは割と最近の作品で(笑)
ダジャレコードで最初に作ったのはダジャ絵Tシャツなんです。

ダジャ絵Tシャツはダジャレをモチーフにした写真をTシャツにプリントしたシリーズです。
無駄な要素はかぎりなく削ぎ落して、ダジャレをクールに表現しています。
寒いダジャレだからこそ、クールでオシャレなプロダクトを追求しました。



どれもかわいい!いろんなダジャレ作品があるんですね!
この中で特に思い入れ深い作品などありますか?

アルミ缶の上にあるみかんですかね。
これが一番最初の作品なんですけど。


ダジャレコードは仕事の合間に個人的にやっているので、友達のカメラマンにこういうのやりたいって相談して、作品撮りの延長みたいな感じで始まりました。
カメラマンと2人でスタジオを借りるところからスタートしたんですけど、このシルバーの缶自体を用意することも大変で(笑)

何も印刷されていない缶って売られてないですもんね。

だからまずアルミ缶の工場に電話したんですけど小売りはしていないってことを言われまして…
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どうしようかなと思い、印刷されたものしか手にはいらないのであれば、印刷部分を磨いてみたら良いかなって思いました。
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最終的に、アサヒビールの缶ってシルバーじゃないですか?
それが一番近いと思ってそれをやすりで磨いて削りました(笑)


えぇ(笑)すごいですね(笑)

他にもダジャレを撮影するための準備を仕事の合間に進めて、カメラマンとスタジオで撮影しました。
アルミ缶の上にあるみかんっていうこんな寒いダジャレを、めちゃくちゃクールに撮影できて、とてもテンションが上がったのをよく覚えています。
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アルミ缶の上にあるみかんなんて聞いたことはあるけどみたことないじゃないですか(笑)

確かに(笑)実際にやろうとも思わないですよね(笑)

そうですよね(笑)
実際に撮影してみないとわからなかったので、予想以上にクールに仕上がって嬉しかったです。なので、思い入れは特にあります。
銭湯のピアニスト

あとイベントですね。

イベントってどういったことをするんですか?

音楽イベントですね。

もしかして…

銭湯のピアニスト…!!(編集部一同ハモる)


なんかそれ気持ちいいっすね(笑)みんなで言ってもらえると。

今、第2回までやっていて。プロのピアニストの方からクラシックをカジュアルに聴けるイベントをしてみたいという声を聴いて、一番最初に思い浮かんだのが銭湯のピアニスト。それはもう3秒くらいで思いつきましたね。アイデアは基本ダジャレで考えるんで。


すごい(笑)そういうアイデアって降ってくるものなんですか??

そうですね、ダジャレ脳みたいので普段から考えていると、なんか近い母音のものを組み合わせて考えることが多いんで。
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だれでもトレーニングすればできますよ。


話は戻るんですけど、銭湯のピアニストとして銭湯でピアノの演奏をすることで、クラシックも銭湯みたいな身近なイメージになるからいいんじゃないですか、となって。
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特にツテもなかったので普通に電話して「銭湯でピアノの演奏会やりたいんですけど」ってところから始まりましたね。

写真を見るとThe銭湯って感じですね(笑)

そうですね。皆さんが想像する感じのThe銭湯です。
天井が高かったので音の響きとかちょうどよかったみたいです(笑)


クラシックは西洋に昔からある伝統的なもので、銭湯も今や家に風呂がある日本では古いものになっていると思うんですけど、西洋と日本の古いもの2つが組み合わさることによって新しいものができるんだなと。
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もともとダジャレで思いついたものではあるんですけど、そういった新たな発見はありましたね。

もともと意図したわけではなくて、やってみて気づいたっていうことですね!

そうですね。やって気づきましたね。
メロンマスク
※メロンマスクの内容は後日ZOOMにてインタビューしたものになります。この記事はダジャレコードの実際の活動の時系列に沿って構成されている関係上インタビューの日時と掲載順に前後がございます。

あと最近メロンマスクという新商品を出しました。
メロンマスクつくりました。マスクが手に入らなくなるまえに、ふと思いつきつくって余ったものです。今はマスクだけでなく、笑顔も手に入れにくいご時世ですが、少しでも気持ちが和んでくれたらいいなと思います。#アベノマスク のまえに #メロンマスク で笑顔回復を。詳しくはhttps://t.co/FlDy2lnxRl pic.twitter.com/vPaZafDZ8B
— 井上裕一|悪魔のデザイナー (@inoue_ych) April 2, 2020

メロンマスク!Trepoで大絶賛でした!可愛いですよね😳

作ったはいいものの100枚しか作らなかったので原価がかなり上がってしまい転売されているくらいの値段になっちゃいました(笑)
でも原価で出してますって言って売り出したら1日で100枚売り切れました。

すごい!!

中には普通に今マスク買えないから助かりましたみたいな人も(笑)

そうなんですね(笑)見た目も可愛いくていいですね!

つけるのは少し恥ずかしい気もしますけどね(笑)まぁでもマスクが今後標準装備になるかもしれないですし。

反響もいいですか?

そうですね。SNSでメロンマスクをみて「天才!」みたいなコメントもいただきました。(笑)
また、BiSHのモモコグミカンパニーさんもメロンマスクを着用した画像をツイートしてもらったり予想以上の反応がありました。

パッケージも売っているメロン風にしてみました。商品名のシールとかメロンっぽい感じにしたりと、裏面にマスクとマスクメロンの歴史の情報をいれたりとこだわりました。
ダジャレをクールに。


井上さんが代表を務めるダジャレコードの作品はどれもダジャレをクールに出されてるなという印象でした。
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おやじギャグイメージのあるダジャレを使うとなるとちょっと寒くなるイメージもありますが、それをお洒落にしているのは何か意図があるんですか?

実はそれはすごく狙ってやっています。
ずっと広告をつくる仕事していて、気づいたことがあったんですよね。意外と広告の表現って、ダジャレが多いことです。
キャッチコピーやキャンペーンとかも、ダジャレの表現がたくさんあるんですが、世の中的にはオジサンの象徴みたいな感じじゃないですか?

じゃあなんでダジャレなのって言われたらあれですけど、なんか覚えやすいし、キャッチーになると思って。
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たとえばラップとか俳句の5、7、5とかもそうですけど、音の母音を踏んでいくリズムがもともと人の体に染みついている感じがあるからこそ気持ちいいのかなって。


別に普段からダジャレをいってほしいとかそういうわけじゃないですけど、ダジャレのイメージがもうちょっといいものになればいいなあとは思ってるんです。
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そのダジャレを使ったダジャレコードというブランドを作って、スベった人を応援できればいいなと。

でも普通におじさんっぽいダジャレをツイッターでつぶやいても面白くないな、と思って。
でもそういうのもあるんですよ。ひたすらダジャレをつぶやくのが好きな人のアカウントみたいな。ただそれじゃダジャレのイメージが変わっていかないなと思って。

身に着けるクールなダジャレのグラフィックを作ってTシャツを制作したりとか、「スベった受験生を応援するポスター」のような熱いメッセージ広告を作ったりとか、イベントしたりとか。
そういった様々な活動を通して『全ダジャレ』のブランディングをしようと思っています。


全ダジャレを井上さんが背負っているんですね(笑)
使命感というか

そうですね(笑)たまに僕がやらないと、っていう気持ちになります(笑)おっしゃる通り使命感ですね(笑)
ㅤㅤ
例えば海外では“See you later alligator.”って言ったりもするみたいですし、ダジャレって寒いイメージじゃなくて言葉遊びみたいなものとしてあると思うんです。


日本でも和歌の表現を方法のひとつとして「掛詞」は、国語の授業でも習うヤツです。「松」と「待つ」をかけたりとか。
それもダジャレですよね。昔は知的な言葉遊びが、今ではくだらないギャグになってしまっているので、令和でそのイメージを変えていきたいと思ってます。

令和に合わせた今風の言葉遊びというか、シャレを提示していくということですね。


そういうことです(笑)
駄洒落とお洒落も似てますよね。
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だから、今までの寒いイメージで伝えるよりかは、テーマは寒いダジャレなんですけど、アウトプット自体はクールに、お洒落になるように気を付けてます。

なるほど。なんかこの一連の話を伺っているとダジャレがかっこいいものに聞こえてきますね。

今着ていらっしゃるダジャレコードのTシャツもすごくオシャレで、でもよく見るとあっ…ダジャレだ!ってなりますよね😆


ははは(笑)まぁそれくらいの距離間がいいのかなって。
ダジャレの文化的価値をアップデート


最後になりますがダジャレコードの今後の展望についてお聞かせ頂けますか?

やりたいことはたくさんあるんですけど、ダジャレで社会問題を解決していきたいです。そして、ダジャレの価値を世の中に示していけたらと思っています。
あとダジャレが広告で使われていることが多いんで、いろんなダジャレの効果や応用の仕方的なものをスクールとしていつかやりたいなとは思ってます。

ダジャレコードはターゲット的にはオールターゲットなんですけど、今日Trepoのライターみたいな若い子がダジャレに興味持っていただけたのはすごく嬉しいなって、、

ユニークで素敵なデザインばかりなので興味持たざるを得ません(笑)

まだまだ手探りですが、少しずつ活動の実績も増えているので、ダジャレと真面目に向き合いながら、スベってもあきらめずにチャレンジし続けたいと思います。まさしく「FOOL IS COOL」です(笑)
終わりに

ダジャレが寒いという文脈で使われない文化を浸透させたい、そしてダジャレで世の中のFoolをCoolに解決していきたい、と語る井上さんは穏やかで柔らかい雰囲気の中に強い意志が感じられました。
新たなダジャレの可能性を開拓し続けるダジャレコード井上さんの今後のご活躍に目が離せません…✨
井上さん、本当にありがとうございました!
〈取材=河合七菜 工藤萌美 石井琴音 青木みなみ / 撮影・編集=中原一真〉