株式会社リクルート(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:牛田圭一、以下リクルート)の観光に関する調査・研究、地域振興機関『じゃらんリサーチセンター』(センター長:沢登次彦、以下 JRC)は、神戸大学大学院経営学研究科の藤原賢哉教授・同志社大学商学部の中岡孝剛准教授との共同研究として、大阪・関西万博来場者の位置情報データ(※1)を用い、来場者の居住地構成および万博を契機とした地域への人流波及効果について分析を実施しました。
(※1)株式会社ブログウォッチャーの位置情報データを用い、2025年4月13日~10月13日の期間に、大阪・関西万博会場内で1回以上訪問したユーザーの周遊行動を分析。取得期間は、2025年4月13日~12月31日(万博開催期間および閉幕後を含む約8.5カ月間)、2024年4月13日~12月31日(前年同時期・約8.5カ月間)とし、両年の比較分析を行った。
■本研究のポイント ※研究の詳細は報告書をご参照ください。
( https://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2026/03/expo2025_osaka_report.pdf )
分析の結果、大阪・関西万博の延べ来場者の居住地は近畿圏が中心である一方、ユニーク来場者ベースでは関東・中部など広域からの参加が一定割合を占めることが確認されました。
さらに、全国の日本人の宿泊旅行者数が減少傾向にあるなか、万博来場者層に限定すると、開催期間中および閉幕後にかけて、近畿圏を中心に周辺地域への訪問・新規宿泊が広がる動きが確認されました。
これらの結果は、万博を契機として、国際イベントが開催地周辺にとどまらず、来場者の周遊を広域へと波及させる可能性を示唆するものです。
■分析結果(1)来場者構造
・延べ来場者数では近畿圏(※2)が中心、ユニーク来場者数では広域からの参加を確認
万博開催期間中に取得された位置情報データを基に、来場者の居住地構成を分析したところ、延べ来場者では近畿からの来場者が7割以上を占めました。一方、ユニーク来場者数で見ると近畿圏の構成比は約5割となり、関東圏や中部圏など広域からの参加比率が相対的に高まる傾向が確認されました。(図1)

図1 大阪・関西万博来場者の居住地構成(地域別)
また、位置情報データおよび博覧会協会公表のチケット情報を基に推計した「万博IDなしチケット来場者」の居住地構成では、近畿が33.7%と低下し、関東(28.8%)・中部(16.2%)・九州・沖縄(8.0%)・中国(5.2%)・四国(3.4%)・東北(2.7%)・北海道(2.2%)と各地域の構成比が上昇しました。(図2)地域別に万博IDあり・なしの来場比率を見ると、近畿圏外は「万博IDなしチケット来場者」が一定割合存在することが確認できます。(図3)

図2 万博ID別来場者の居住地構成(地域別)

図3 万博IDあり・なしチケット保有の割合(地域別)
さらに来場回数の分析では、近畿圏は複数回来場のリピーター比率が高い一方、関東圏は単発来訪が中心となるなど、近隣層と遠方層で来訪構造が異なることが確認されました。近隣圏では複数回の来場(リピート)によって延べ人数が積み上がりやすい一方、「万博IDなしチケット来場者」には、遠方からの来場者やライト層が相対的に多く含まれていることが推測されます。
(※2)大阪府、奈良県、兵庫県、滋賀県、和歌山県、京都府、三重県。
■分析結果(2)万博を契機とした宿泊需要の増加
・万博来場者層の宿泊行動が活発化 新規宿泊が離反を上回る県が近畿圏を中心に広域へ拡大
観光庁の宿泊旅行統計調査では、2025年4月から12月までの全国の日本人の宿泊旅行者数は前年同期比で減少しています。一方、万博来場者のうち、本パートで分析対象とした、2年連続で居住地以外の都道府県への宿泊旅行を行っていた旅行者に着目すると、2025年は宿泊を伴う旅行行動がより活発化していることが確認されました。これは、全国的に宿泊旅行者数が減少傾向にあるなかで、万博来場者層では相対的に積極的な宿泊・周遊行動が行われていたことを示唆しています。
都道府県別に、2024年に宿泊していたが2025年は宿泊しなかった来訪者(離反)と、2024年は宿泊していなかったが2025年に新たに宿泊した来訪者(新規)を比較しました。その結果、万博開催期間中は近畿圏のみならず、中四国や愛知県、静岡県などで、新規の増加が、宿泊を継続しなかった来訪者の減少を上回る傾向が確認されました。特に大阪府では、新たに宿泊した来訪者の割合が大きく上回っており、開催地として万博来場者層の宿泊需要を相対的に多く取り込んだ可能性が示唆されます。閉幕後の期間を含めても、近畿圏を中心に四国の一部までプラス傾向が継続しており、万博来場者層における宿泊行動の活性化が持続している様子がうかがえます。(※3)
上記の結果から、万博が単一目的地のイベントにとどまらず、広域周遊を伴う宿泊需要を創出した可能性が示唆されます。一方、万博開催期間中・閉幕後で、新規の増加よりも離反の減少が上回る都道府県も観察されました。万博開催により、従来の旅行客の宿泊地のシフトにつながった可能性も考えられます。(図4)

図4 万博来場者における宿泊行動の変化
(※3)「新規獲得」が「離反」を上回った都道府県…(左図・獲得率が高い順に)大阪府、奈良県、兵庫県、滋賀県、香川県、和歌山県、京都府、静岡県、岡山県、徳島県、愛知県、高知県、三重県、青森県、広島県、山口県。(右図・獲得率が高い順に)大阪府、奈良県、香川県、兵庫県、滋賀県、高知県、和歌山県、静岡県、徳島県、岡山県、愛知県。
■地域事例
こうした分析結果を踏まえ、万博来場者の訪問行動が、近畿圏や近畿圏周辺地域にも広がっていた事例として、万博施策と連動した徳島県および滋賀県の取り組みをご紹介します。
・徳島県:交通施策と連動し訪問が拡大
徳島県では、万博会場内での情報発信と併せて、近畿発着の高速バス・フェリーを片道500円で利用できる「ワンコインキャンペーン」を実施しました。
位置情報データを基に万博来場者の行動を分析すると、本分析対象において2025年4月13日~10月13日の期間に徳島県を訪問した万博来場者の割合は2024年より上昇しており、万博来場者層のなかで徳島県を訪問する動きが広がったことが確認されました。宿泊者における滞在時間についても、2024年より長く滞在する傾向が見られました。
居住地別に見ると、四国・近畿圏に加え、関東など遠方地域からの訪問割合も増加しました。特に遠方居住者では「万博を訪れた後に徳島へ向かう」傾向が相対的に高く、万博が徳島訪問の契機として機能した可能性が示唆されます。
さらに、万博来場者の徳島県内の訪問エリアを見ると、従来訪問が多かった徳島市・鳴門市周辺に加え、三好市(A:祖谷のかずら橋)や美馬市(B:うだつの町並み・C:剣山山頂)など県内の内陸部の観光地にも訪問が広がる傾向が確認され、県内周遊の拡大がうかがえました。(図5)(※4)

図5 徳島県における万博来場者層の滞在ログの分布(4月13日~10月13日)
(※4)滞在ログの観測点は、1時間当たりで集計し、その時間内の平均的な位置情報を用いた。また、観測点の大きさはその時間におけるログ数の多さを示している。2024年から2025年の変化率は、ABCの各地点から半径1km圏内に滞在ログが記録された人を訪問者として定義し、その人数を基に算出。
・滋賀県:地域資源の発信による来訪機会の創出
滋賀県では、万博期間中、会場内でのパビリオン出展や関連イベントにおいて、滋賀の自然や暮らし、文化を紹介する取り組みを行いました。
位置情報データを基に万博来場者の行動を分析すると、本分析の対象者において滋賀県甲賀市への訪問が増加していることが確認されました。(図6)(※5)

図6 滋賀県における万博来場者層の滞在ログの分布(4月13日~10月13日)
(※5)滞在ログの観測点は、1時間当たりで集計し、その時間内の平均的な位置情報を用いた。また、観測点の大きさはその時間におけるログ数の多さを示している。2024年から2025年の変化率は、D地点から半径1km圏内に滞在ログが記録された人を訪問者として定義し、その人数を基に算出。
甲賀市は、1970年大阪万博の「太陽の塔」の背面の黒い太陽が同市の信楽で創作されたこともあり、大阪・関西万博に積極的に関わり、信楽焼をはじめとする伝統工芸やアートの展示、パビリオンへの資材提供など万博会場においてさまざまな形で地域の魅力を発信しました。こうした取り組みが、地域資源の発信拠点であるD:滋賀県立陶芸の森への訪問につながった可能性が考えられます。
地域資源を活用した地域ブランド発信の取り組みが、万博来場者の滋賀県への訪問の契機のひとつとなり、万博を起点とした周遊が近畿周辺地域にも広がっていた可能性が示唆されます。
■担当者のコメント
・株式会社リクルート じゃらんリサーチセンター 研究員 北真理子
2025年に開催された大阪・関西万博は、コロナ禍以降、日本国内で開催された最大級の国際イベントのひとつでした、来場者構造では「ユニーク来場者」や「万博IDなしチケット来場者」の居住地から、近畿圏だけでなく全国規模で来訪を促すイベントとなったことがうかがえました。また周遊行動では、全国の宿泊旅行者数が減少傾向にあるなかでも、万博来場者層では開催地周辺を中心に近隣地域への来訪の広がりや新規の宿泊行動の増加が見られ、国際イベントが開催地にとどまらない広域的な移動や観光需要を生み出す可能性が示されました。
こうした大規模イベントに合わせて、地域側が交通施策や情報発信などを組み合わせることで、波及効果を取り込める可能性があると感じています。
今後の大規模な国際イベントの開催に向けては、主にふたつの視点が重要になると考えられます。ひとつは、地域ごとに異なる来訪構造を踏まえた戦略設計です。開催近隣地域ではリピーターが多い一方、遠方地域では初回訪問を中心とした来場が多いなどの特徴が確認されており、近隣地域ではリピーター獲得、遠方地域では初回訪問を契機とした周遊促進といった施策が重要になります。もうひとつは、大規模イベントの開催期間は、従来の観光来訪者がイベント開催地へシフトする可能性がある点です。特に開催地から遠方の地域では、自地域への来訪需要への影響も踏まえた観光施策を検討することが求められるのではないでしょうか。
JRCでは、今後も各地域の観光振興につながる研究や知見の発信に取り組んでいきます。本研究の詳細は成果報告書として公開しており、万博来訪前後における宿泊タイミングの分布特性や、他都道府県の分析結果などについても掲載しています。ご参照ください。
▼詳細はこちら
https://jrc.jalan.net/surveys/expo2025_osaka/
・神戸大学大学院経営学研究科 藤原賢哉 ・同志社大学商学部 中岡孝剛
本研究は、大阪・関西万博という大規模イベントが、日本人の旅行行動にどのような影響を及ぼしたのかを、位置情報データを用いて分析したものです。
特に周遊性に着目し、万博訪問との時系列的な関係のなかで、来場者がどの都道府県を訪れているのか、また宿泊先の配分構造がどのように変化したのか(新規宿泊先の選択や既存宿泊先からのシフト)を検証しました。さらに、個別地域における移動軌跡や滞在行動の変化についても、万博開催前の2024年と万博開催期間を含む2025年のデータを用いて人流のヒートマップを作成し、比較検証を行いました。位置情報データの利活用により、公式統計やアンケート調査では捉えにくい旅行行動のダイナミズムを可視化できた点が、本研究の大きな特徴です。
■調査・分析概要
調査名 :大阪・関西万博を契機とした地域への人流波及効果に関する分析
分析対象期間:2025年4月13日~12月31日(万博開催期間および閉幕後を含む約8.5カ月間)
2024年4月13日~12月31日(前年同時期、約8.5カ月間)
取得対象者 :2025年4月13日~10月13日に大阪・関西万博会場内で1回以上の位置情報ログが取得されたユーザー
データの種類:ブログウォッチャーの提携アプリをダウンロードし、位置情報取得に同意したユーザーの端末から取得された位置情報データ
※分析上の留意点
本調査は、利用者の同意に基づき取得された位置情報データを、個人を特定できない形で統計処理した上で分析を行っている。位置情報は取得環境や利用状況により記録頻度に差が生じるため、実際の移動や訪問の全てを完全に網羅するものではない。
■リクルートグループについて
1960年の創業以来、リクルートグループは、就職・結婚・進学・住宅・自動車・旅行・飲食・美容などの領域において、一人ひとりのライフスタイルに応じたより最適な選択肢を提供してきました。現在、HRテクノロジー、人材派遣、マーケティング・マッチング・テクノロジーの3事業を軸に、60を超える国・地域で事業を展開しています。リクルートグループは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現に向けて、より多くの『まだ、ここにない、出会い。』を提供していきます。
詳しくはこちらをご覧ください。
リクルートグループ: https://recruit-holdings.com/ja/
リクルート : https://www.recruit.co.jp/
■株式会社ブログウォッチャーについて
商号 : 株式会社ブログウォッチャー
代表者 : 代表取締役社長 新村生
所在地 : 〒108-0023 東京都港区芝浦3-12-7 住友不動産田町ビル 5F
設立 : 2007年4月
URL : https://www.blogwatcher.co.jp/
事業内容: 位置情報データプラットフォームによる位置情報関連サービス開発・提供
SDKの提供や分析、広告配信、データ連携など
位置情報データにまつわる様々なソリューションがあります。
▼利用する位置情報データについて
ブログウォッチャーが活用しているデータは、提携アプリをダウンロードしていて、かつ位置情報取得を許可したユーザーの情報のみを利用しています。
・データの取得・活用についての詳細:
https://www.blogwatcher.co.jp/terms/
・データの取り扱いやプライバシー保護の取り組みを、
イラスト付きでやさしく解説「位置情報をONにするとどうなるの?」:
https://www.blogwatcher.co.jp/safety_of_locationinformation
▼運営メディア
・人流データを可視化する情報発信メディア「まちログ」:
https://www.blogwatcher.co.jp/machilog
※このプレスリリースに記載されている情報は発表日時点のものであり、予告なく変わる可能性があります。あらかじめご了承ください。








